CREATIVE / DESIGN / THINKING
CREATIVE 001
作品づくりを迷わないための、テーマとコンセプト
違いを知り、アイデアを表現へつなげよう
何か作りたいのに、方向が決まらない
「写真や動画を作ってみたい」「Webページをデザインしたい」。そう思って制作を始めたものの、何をどう表現すればよいのかわからず、手が止まってしまったことはないですか。
あるいは、使いたい写真や色、映像などが先に浮かぶこともあります。しかし、それらを思いつくまま並べるだけでは、作品全体の方向性が定まらないことがあります。途中で別のアイデアが加わり、最初に作りたかったものから離れてしまうこともあるでしょう。
このような迷いを整理するときに役立つのが、「テーマ」と「コンセプト」です。
テーマは、作品で「何を扱うのか」を示します。コンセプトは、そのテーマを「どのような考え方で伝えるのか」を示します。この2つを整理すると、作品に使う写真、動画、言葉、色、構図、音などを選ぶための基準ができます。
何を扱うのか
作品の土台となる題材や、中心となる話題を決めます。
そのテーマを、どのような考え方で伝えるのか
テーマを表現する視点と、作品が進む方向を決めます。
もちろん、制作を始める前に、すべてを完璧に決める必要はありません。まず作ってみて、途中でテーマやコンセプトに気づくこともあります。大切なのは、迷ったときに立ち戻れる考え方を持っておくことです。
それでは最初に、「テーマ」とは何かを見ていきましょう。
テーマとは「何について作るか」
テーマとは、作品で「何について扱うのか」を示すものです。作品全体の土台となる題材や、中心となる話題ともいえます。
たとえば、「春」「家族」「コーヒー」「散歩」「地域」「働くこと」などは、テーマとして考えられます。写真、動画、文章、Webデザインなど、制作するものが違っても、最初にテーマを決めることで、何を中心に作るのかを整理できます。
テーマは、必ずしも一つの単語で表す必要はありません。「身近な春を見つける」「家族と過ごす時間」「地域で働く人たち」のように、少し具体的な言葉で表すこともできます。大切なのは、自分が作品を通して取り上げたいものを、わかる言葉にすることです。
ただし、「コーヒー」というテーマを決めただけでは、どのような作品にするのかまでは決まりません。朝の目覚めを表現するのか、仕事中の休憩を描くのか、大切な人と過ごす時間を伝えるのかによって、選ぶ写真や映像、色、言葉は変わります。
テーマは作品の出発点ですが、進む方向まで決めるものではありません。その方向を考えるために必要になるのが、次に説明する「コンセプト」です。
コンセプトとは「どのような考え方で伝えるか」
コンセプトとは、テーマを「どのような考え方で伝えるのか」を示すものです。作品を見る人に何を感じてほしいのか、どのような視点からテーマを表現するのかを、一つの方向にまとめます。
たとえば、テーマが「コーヒー」だとします。同じコーヒーでも、次のように異なるコンセプトを考えられます。
- 忙しい一日の終わりに、気持ちを切り替える一杯
- 大切な人との会話をつなぐ一杯
- 朝の時間を前向きに始める一杯
扱っているテーマは同じですが、コンセプトが変わると、作品で伝えたい内容も変わります。それに合わせて、使う写真や映像、色、言葉、構図、音なども変わってきます。
コンセプトは、作品を説明するための格好のよい言葉ではありません。制作中に「この写真を使うべきか」「どの色が合うか」「どのような音を加えるか」と迷ったときに、選択の基準となる考え方です。
最初から短く整った言葉にする必要もありません。まずは、「誰に、何を感じてほしいのか」「どのような視点で伝えたいのか」を、自分の言葉で書き出してみましょう。
テーマだけの場合と、コンセプトがある場合
テーマとコンセプトの違いを、引き続き「コーヒー」を例に考えてみましょう。
テーマだけを決めた状態では、コーヒーカップ、コーヒー豆、カフェ、湯気など、さまざまな素材が候補になります。しかし、何を基準に選べばよいのかが決まっていないため、写真や色、言葉に統一感を持たせるのが難しくなります。
コンセプトが決まると、表現の方向を具体的に考えられるようになります。
| 表現要素 | テーマだけの場合 | コンセプトがある場合 |
|---|---|---|
| 写真・動画 | コーヒーに関係する素材を幅広く使う | 一日の終わりを感じる室内や、ゆっくり湯気が立つカップを使う |
| 色・光 | 好みの色や明るさを選ぶ | 暖色系の照明や落ち着いた色を選ぶ |
| 構図 | カップや豆を見栄えよく配置する | 一人でくつろぐ時間が伝わる、余白のある構図にする |
| 言葉 | コーヒーのおいしさや香りを説明する | 「今日を終えて、ひと息つこう」など、休息を感じる言葉を使う |
| 音 | カフェの音や音楽を自由に選ぶ | お湯を注ぐ音や静かな環境音など、気持ちが落ち着く音を使う |
同じテーマでも、コンセプトを「朝の時間を前向きに始める一杯」に変えれば、明るい光、軽快な音楽、動きのある映像などが合うでしょう。
このように、コンセプトは使える表現を一つに限定するものではありません。たくさんある表現の中から、作品に合うものを選び、全体を一つの方向へまとめるための基準です。
4つの質問からコンセプトを作る
コンセプトを考えようとしても、最初から一文にまとめるのは簡単ではありません。そこで、4つの質問に順番に答えながら、考えを整理してみましょう。
ここでは、「散歩」をテーマにして考えます。
- 1何を扱う?テーマ
- 2誰に伝える?届けたい相手
- 3何を感じてほしい?感情・変化
- 4どのような視点で表現する?表現の視点
- GOALコンセプト一文にまとめる
1.何を扱う?
まず、作品で扱いたいテーマを決めます。
散歩
この段階では、単語や短い言葉で構いません。「自分が気になっていること」「誰かに見せたいもの」などから考えてみましょう。
2.誰に伝える?
次に、その作品を誰に見てほしいのかを考えます。
忙しい毎日を過ごしている人
年齢や職業まで細かく決める必要はありません。「毎日時間に追われている人」「身近な風景を見過ごしている人」のように、その人の状態を考えると整理しやすくなります。自分のために作る作品なら、「今の自分」を相手にしても構いません。
3.何を感じてほしい?
作品を見た人に、どのような気持ちや変化を持ち帰ってほしいのかを考えます。
少し立ち止まって、身近な風景や足元の小さな変化に目を向けてほしい
「楽しい」「落ち着く」「驚く」といった感情だけでなく、「見方が変わる」「やってみたくなる」など、作品を見たあとの変化として考えることもできます。
4.どのような視点で表現する?
最後に、テーマ、相手、感じてほしいことをもとに、自分がどのような視点から表現するのかを考えます。
今回の例では、次のようにまとめられます。
いつもの道にも、小さな発見がある
これが、この作品のコンセプトです。
4つの質問への回答を、すべて一文に詰め込む必要はありません。長い説明を作るのではなく、制作中に思い出せる、わかりやすい言葉にまとめることが大切です。ポイントは、自分の言葉でまとめることです。
また、最初から完成したコンセプトを作ろうとしなくても構いません。いくつか案を書き出し、写真や映像を集めながら、作品に合う言葉へ調整していきましょう。
コンセプトを具体的な表現へつなげる
コンセプトが決まったら、それを写真、動画、色、構図、言葉、音などの具体的な表現へつなげていきます。
ここでは、4つの質問から作った次のコンセプトを使います。
いつもの道にも、小さな発見がある
このコンセプトからは、見慣れた道の中にある、普段は見過ごしやすいものへ目を向ける表現が考えられます。
| 表現要素 | 展開例 | 選ぶ理由 |
|---|---|---|
| 写真 | 足元の草花、壁に映る影、路地の看板、水たまりに映る空 | 身近にある小さな発見を見せるため |
| 動画 | 歩く視点から始め、途中で気づいたものへゆっくり近づく | 「歩く」「気づく」「立ち止まる」という流れを伝えるため |
| 色 | 自然な緑や空の青を生かし、落ち着いた色調にする | 日常の風景を穏やかに見せるため |
| 構図 | 草花や影へ近づく、低い位置から撮る、余白を残す | 普段とは少し違う見方を示すため |
| 言葉 | 「少し立ち止まると、見えてくるものがある」 | コンセプトを短い言葉で補うため |
| 音 | 足音、風の音、鳥の声、遠くを走る車の音 | いつもの道にある空気や時間を感じさせるため |
たとえば、15秒程度の短い動画なら、次のような流れが考えられます。
- いつもの道を歩く映像から始める
- 足元に咲いている小さな花を映す
- 水たまりに映った空や、壁に揺れる木の影を見せる
- 「いつもの道にも、小さな発見がある」という言葉で終える
写真作品なら、発見したものを数枚の組み写真にまとめられます。Webページなら、余白を広く取り、写真と短い言葉をゆっくり見せる構成が考えられます。
ここで大切なのは、表現のアイデアを思いつくたびに、コンセプトへ立ち戻ることです。「目立つから使う」「きれいだから加える」のではなく、「この表現は、小さな発見を伝えるために必要か」と考えます。
コンセプトは、自由な発想を妨げるものではありません。思いついた表現の中から、作品に合うものを選ぶための基準です。
自分のテーマで考えてみよう
ここまで、テーマとコンセプトの違いと、コンセプトを具体的な表現へつなげる方法を見てきました。最後に、自分が作りたいものを題材にして考えてみましょう。
テーマとコンセプトを考える
- 1私が扱いたいテーマ何について作りたいですか?
- 2届けたい相手その作品を誰に見てほしいですか?
- 3感じてほしいことどのような気持ちや変化を持ち帰ってほしいですか?
- 4表現したい視点どのような見方や考え方で伝えたいですか?
最初から完璧な文章を作る必要はありません。制作中に迷ったとき、立ち戻れる言葉になっていれば十分です。
コンセプトを書いたら、作品で使いたい表現も考えます。
- どのような写真や映像を使うか
- どのような色や光が合うか
- どのような構図で見せるか
- どのような言葉や音を加えるか
すぐに思いつかない場合は、「今日見つけたもの」「好きな時間」「よく歩く道」など、身近な題材から始めてみましょう。大きなテーマでなくても構いません。自分が気になったことを言葉にするところから、作品づくりは始まります。
また、テーマやコンセプトは、一度決めたら変えてはいけないものではありません。実際に作りながら、もっと伝えたいことが見つかったら、書き直しても構いません。
テーマで「何について作るか」を決め、コンセプトで「どのような考え方で伝えるか」を決める。この2つを意識すると、思いついたアイデアを具体的な作品へつなげやすくなります。
